2025.08.22

移住者体験談

【壱岐市】長崎県壱岐市で海と生きる──地域と未来をつなぐ再生プロジェクトへの挑戦

故郷・壱岐へのUターン──30歳での決断

田山さんが壱岐(いき)に戻ったのは30歳の時。それまでは長崎県諫早(いさはや)市で仕事をしながら、青年会議所に所属。青少年育成などの地域活動にも力を入れていたといいます。

30歳を迎えたタイミングでふと「壱岐に何も貢献できていないな」と”ふるさと愛”が芽生え、退職を決意。そこから壱岐市へとUターンすることになりました。

「小学校の時は近くの防波堤から海に飛び込んだり、常に海がある生活をしていました。当時はOKだった銛突き(もりつき)をして遊んだり、岩場に行って岩を掘り起こすと出てくるカニを天ぷらにして食べたりしていました」

「海には、何か楽しいこととか、美味しいものがあるので、とても好きな存在でしたね。海と共に生きてきたということが印象に残っています」

海を取り戻す──リーフボールとの出会い

現在、田山さんは一般社団法人マリンハビタット壱岐の代表理事を務め、海洋環境再生のための「リーフボール」事業に取り組んでいます。リーフボールとは、コンクリートブロックに海藻などの種をつけて植え付け、海の砂漠化「磯焼け」を改善するためのブロックです。

「小さい頃から海に潜って遊んだりしていたので、海がとても身近な存在で『磯焼け』という問題も認識していました。海の現状を知らなければスルーしていたかもしれないと思います」

「まさにこれが壱岐に貢献できる事業だと思いました」

自身にとって大切な存在である壱岐の海を守る使命感こそが、この”海をよみがえらせる挑戦”に取り組む活力となっているのです。

「昔の豊かな海を知っているからこそ、透き通って一見綺麗に見えるけれど、岩肌に何も生えていない今の海の状態を異常だと感じた」と同時に「豊かな状況じゃないということが、現在の壱岐の海、日本の海では起こっている」と危機感を語っています。

リーフボール

壱岐の暮らしと、自然の再発見

「学生時代の壱岐と、Uターンしてからの壱岐は全く見え方が違います。より魅力が増してきた感じがしているんです」「Uターンして帰ってくると、車も運転できるようになっているし、行ったことがない色々なところに行けるようになりました。そういった意味で、新たな発見も多かったです」。田山さんにとってのUターンは、地元 壱岐市の魅力や、当時気づかなかったものに改めて気づくきっかけになりました。

「壱岐は丸い島で、どこに住んでいても10分くらいで海に行けるのがとても魅力です。魚も釣れるし農作物も取れる。自分で食料を調達したり、自給自足ができる島です」「突発的にバーベキューをしようと言っても、サザエもらったから持ってくる、魚もらったから持ってくる、野菜もらったから持ってくる。そういったことで豪華なバーベキューができることもあります」と、日常に根差した豊かさを話してくれました。

また、「島外にいた時は朝日や夕日を気にすることはなかったけど、壱岐に帰ってきてからはお客様と夕日を見に行ったり、朝日を見に行ったり、太陽の動きが価値あるものに感じられるようになりました」と感覚の変化があったことも印象的だそうです。

壱岐の夕日

地域を変える“アクション人口”という発想

「地元の人間と移住してきてくれた方が協力し合って新たなものを作って、関係人口の先の“アクション人口”というものを増やしたい。アクション人口というのは、壱岐を知って関係を持ってもらった中で、壱岐でなにかやろうとアクションを起こしてもらえる人のこと。アクション人口を増やすことが本当の地域活性化につながるのではないか」と語る田山さん。

自らの造語だと前置きした“アクション人口”という言葉からも、壱岐をさまざまな方が手を取り合ってより良い島にしていきたいという熱い想いが伺えます。

「自分の中でも、やる前から失敗を考えるのは嫌。まずやってみて、やったことが成功の糧になる」と自らの姿勢についても明かし、これから移住を考えている人々の背中を後押しする一言のようにも感じ取れました。

「こんなに魅力的な島なのに、来たことがない、知らない人も多い。まずは壱岐の島というものを全国、世界の人に知ってもらいたい」「昔みたいにウニやアワビ、サザエといった沿岸の生物たちがたくさんいる豊かな海を戻したい。人間の社会も経済も回しながら、環境も良くなるようなモデルを作っていきたい」

そう語る田山さんからは、“海と共に生きる”という原点への愛着と、壱岐の未来をつくる使命感がひしひしと伝わってきます。壱岐市での暮らしには、日々の営みのなかにこそ感じられる深い喜びと、自然と寄り添うことで育まれる確かな実感があります。ぜひ多くの方に、田山さんのように壱岐の魅力を“自身の目と心”で体感していただきたいと思います。

「アクション人口」について語る田山さん