
- 移住年
- 2012年
- 職業
- 自営業
都会の刺激を知ったからこそ気づけた、田舎の心地よさ──。Uターンで長崎県西海(さいかい)市に移住した拝崎麻衣さん。西海市で自然に寄り添いながら暮らすひとりの女性の姿は、“地方移住”を考える皆さんにとってのロールモデルとなるかもしれません。
都会のようなスピード感はないけれど、その分だけ流れる時間は穏やかで、丁寧に暮らすことができる。視点を変えれば、日常がちょっと豊かになる。今回は西海市で働き、暮らすことのリアルな魅力に迫りました。
西海市へのUターンで変化した、地方への見方
高校まで西海市で過ごし、東京のパティシエ専門学校で学んだ拝崎さん。渋谷のスクランブル交差点の人混みやラッシュ時の満員電車といった東京の日常は、地方出身の彼女にとってまさに異世界。「見たことのないものにすごく興味を惹かれる性格で、新しい環境が魅力的に見えました」と振り返るように、東京での暮らしに疲れたという感覚はなかったのだそう。
専門学校卒業後は福岡での就職を経て、12年前に西海市へとUターン。「都会が恋しいというよりは、田舎の不便さを知った状態で都会の便利さを知ってしまったので、Uターンで帰る時に多少の抵抗はありました」。
それでも、東京での暮らしを経験したことで、地方で暮らすことの考え方に変化もあったようです。
「社会人になって自分ができることも増えて、車の運転が嫌いじゃないということもあって移動の制限がなくなったりしたことで、意外と不便じゃなかったことに気がつきました」

「田舎だから仕事がない」その考えから離れてみる
現在は飲食店の経営をベースにしながら地域商社、いわば『町のお役立ち会社』として西海市の事業者や行政のサポートに携わっています。デザインやIT導入の支援、アプリ開発、など多岐にわたる事業を担当。地域商社での仕事を通じて人材育成という形で地域の方々に働き方の提案を行っています。
「田舎だから、西海だからという理由であまり仕事がないということに悲観的になるのではなく、視点を変えて新たな働き方を知ると、色々な選択肢が広がる」と語るように、地方にいることのデメリットが減っていると現状を身をもって体感されているようです。
田舎の“不便”の中にある豊かさを感じながら、自分らしい働き方を実現している彼女の姿は、”地方移住後の働き方”を模索する多くの人にとって、大きなヒントになるはずです。
多種多様な働き方が広がる今だからこそ、地方での仕事に可能性があるということが伝わってきます。

自然の音とともに──西海市の日常風景
「私にとっての西海市の音は、波の音や、うるさすぎる時もあるくらいの虫の声」。車がほとんど通らないような田舎だからこその“自然の音”に包まれる暮らしが、拝崎さんの日常です。
15分間、家の前に座っていても誰にも会わないという日もあるそう。
時間の流れがゆるやかで、心の余白が広がっていくような感覚──。それが彼女にとっての“西海市のアタリマエ”として存在しているのです。

「思っていたのと違う」も受け入れて──視点を変える力
田舎暮らしの夢と理想を抱いて移住しても、現実とのギャップに戸惑う人も少なくありません。「思っていたのとは違うけど、こうやったら楽しいかもと思える視点を持てる人には田舎暮らしは向いているかな」といいます。完璧を求めすぎず、“今あるものを楽しむ”姿勢。
地元に戻ることで見えてきた、西海市の新しい魅力や都会では得られない豊かさが、ここには確かに存在します。かつては当たり前すぎて気づけなかった地元の良さ。自然、働き方、人との関わり──どれを取っても、そこには都会にはないかけがえのない魅力がありました。
「予定通りにいかないこともあるけど、その時に起きたことを楽しめる力が大事かもしれない」。その言葉は、移住を検討する人々の背中をそっと押してくれることでしょう。
地方での暮らしは“都会にいると見えなくなってしまう日々の小さな幸せの連続”、それらを再発見する絶好の舞台かもしれません。何気ない日常の中にこそ、人生を彩るヒントが潜んでいる。そんな発見が、長崎・西海市にはたくさん詰まっています。