2024.03.08

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【インタビュー】自分がワクワクできる場所で、魅力を伝えるお手伝いを~波佐見町 西海陶器(株)PRディレクター栗田真希さん~

こんにちは。

移住情報発信コーディネーター山口です。
今回は波佐見町に移住された栗田さんにお話をお伺いしました。
東京でコピーライターを経て、フリーのライターとして活動。
その後、ものづくりへの興味から波佐見焼の魅力を発信するために波佐見町へ移住されました。
はじめての田舎暮らしへの驚きや楽しさにあふれた波佐見Lifeをぜひご覧ください。

栗田さん

Profile

  • 栗田 真希さん
  • 出身:神奈川県横浜市
  • 東京都→ 長崎県波佐見町(Iターン)
  • 移住年:2020年

新卒で経理の仕事に就いたのちコピーライターに転職。
コピーライターを経てフリーライターとして活動を開始。
2020年6月より東京から波佐見町に移住。
西海陶器(株)にてPRディレクター/プロダクトマネージャーとしてオウンドメディア「Hasami Life」の運営、執筆を中心に行いながら、副業でもライター業を行っている。

ものを作っている人たちの言葉や声を届ける仕事がしたい

現在のお仕事と移住を考えるきっかけを教えてください。

西海陶器のWEBメディア兼ECサイトである「Hasami Life」の運営をしています。

WEBメディアとしては、職人さんをはじめとした波佐見の人たちに取材して記事を書いています。焼きものにとどまらず、町のことを発信中です。
波佐見焼のお買いものができるECサイトでもあるので、器の使い方やテーブルコーディネートの提案なども発信しているんですよ。自分たち編集部で料理を作って、器に盛って、写真も撮影。SNSでの発信も行っています。

私はもともと、東京でコピーライターの仕事をしていました。
コピーを書くことは大変でしたけど、楽しかったです。ただ、徐々に気持ちが変化していきました。世の中にあるさまざまな商品やサービスにふれるうち、「もっと自分が好きなものとじっくり付き合い、伝える仕事をしたい」と思うようになったんです。

昔から、ものづくりには興味がありました。
大学生のときに北欧家具の会社にインターンに行っていたこともあって。私自身はものづくりをできないけど、作っている人たちの声を届けることならできる。そう考えて、新しい仕事を探していました。

そんなときに、「日本仕事百貨」というWebサイトで、現職の求人を見つけたんです。西海陶器という波佐見焼を扱う会社が「Hasami Life」というサイトを立ち上げるにあたって、ライティングができる人材が欲しいと書かれていました。

その求人記事を読んだとき、すごくいいなあと思ったんですよね。というのも、「Hasami Life」は焼き物のECサイトでありながら、焼き物だけでなく、町全体の魅力を発信するメディアだったんです。ものを販売するだけでない姿勢に共感しました。

また、ものづくりの中でも、焼き物に心惹かれているタイミングだったんです。求人に応募する少し前に、ちょうど友だちから誘われて通うようになった器屋さんがあって、私が焼き物に興味を持ち始めたところでした。

求人に応募して、面接に行って。社長と波佐見のこと、私の今までの仕事のこと、たくさんお話しました。2時間くらい。うちの社長は3代目なんですけど、若くて考え方も柔軟。この社長の下なら楽しく働けそうだなって思いました。

その後、内定をいただいたのですが、「働く働かない以前に、波佐見に住んでちゃんと暮らせるかがすごく大事。まずは一度波佐見に視察に来ませんか」って言ってくれたんです。

そのとき、初めて波佐見に訪れて移住について真剣に考えました。

初めて来たときの印象はいかがでしたか?

古いものがいい形で残っているという印象を持ちました。
たとえば人気スポットの西の原でも、元々倉庫だった場所を焼き物のショップとして活用しています。元のよさを損なわず、きれいにリメイクして使っていますよね。

とくに、波佐見町の中尾山という、古くから焼き物づくりが行われていた場所を訪れたとき、道とか水路に、昔の焼き物のかけらが落ちていたのが印象的でした。
波佐見町ならではですよね。そのとき、「今踏んでいる地面の下に、400年分のいろんなものが積み重なっているんだ」と考えて、これまで暮らしてきた場所とは違う魅力があると思いました。

栗田さん_南創庫
栗田さん_南創庫

(西の原地区で西海陶器が運営している”南創庫”。こちらも元々倉庫として使われていた場所をリメイクしてショップとして活用している。)

今までにない経験から自分がちょっとずつ変わっていく楽しさ

移住以後の暮らしでどういう変化がありましたか?

生活が規則正しくなりました。
以前は、9時に起きて、仕事して、いつ帰っていつ寝るのか、日によって違う不規則な生活でした。
現在は8時に始業で、17時になったら、みんなパッと帰るんですよ。残業する日もあるんですけど、まだ外が明るいうちに帰れるという感動は大きいです(笑)。
17時半から18時半くらいに帰って、ご飯を作って食べて。そのあとは自分の副業の書き仕事をしたり、本を読んだり、余暇時間は以前よりたくさんありますね。自分の時間がしっかり取れています。

自然が豊かな環境で暮らすことからも、得ることが多いです。日が沈むのを眺めたり、空の広さを感じたり。6月ごろにはホタルも見れました。今日はいい風が吹いているなとか、陽の光が気持ちいいなということを味わう余裕が生まれましたね。

田舎なので、買い物は少し遠出する必要がありますし、友だちともなかなかリアルには会えません。でも通販サイトで頼めば家まで荷物を運んでくれるし、コロナ禍でテレビ通話を使う人が増えているので、誰かと話したいなと思ったときはオンライン飲み会もできます。家の中にいるだけだったら、東京にいたときと変わらないです。不自由さはあまり感じません。

また、波佐見に住みはじめてからは、よく頂き物をします。手作りの食べ物や野菜とか。このあいだは、過去に取材したおじいちゃんから3キロの新米をもらいました。驚いたのが、ものをくださる人たちが、みんなが嬉しそうなんです。

都会にいたときは、お金を稼いで、消費するっていうライフスタイルでしたが、波佐見の人たちは、自分で作っておすそ分けするのが楽しみで、作った物にも自信を持っているんですよね。

鬼木郷の棚田

(日本の棚田百選にも選ばれている鬼木郷の棚田)

はじめての田舎暮らしで驚かれたことは何かありましたか?

自然が豊かなぶん、びっくりすることもあります。
たとえば、すごく蜘蛛の巣がたくさんあるなあ、とか。身近なところで巣をいくつも見かけます。東京で暮らしていたときは、ここまで見かけることがありませんでした。

今までは、汚いところや、ずっと長い間放置している部屋に蜘蛛が巣を張るとイメージしてたんですけど、こちらでは、2~3日したら巣ができてるので、最初の不衛生なものっていう印象はなくなりましたね。

蜘蛛だけでなく、近所でアナグマを見かけたり、雨が降ると沢蟹も出てきたりします。

それからなんといっても、星のきれいさには驚きましたね。わたしは夜空を見上げるたびに感動しているんですけど、波佐見の人にとっては当たり前だから、あまり価値を感じていないんです。

私もきっと、徐々に慣れていって忘れてしまうんでしょう。そのぶん今、ちゃんと残しておきたい、発信したいって気持ちはあります。

とにかく驚くことばかり。それだけ、今までの人生に無いことをたくさん経験できているので、何事もプラスだなって思っています。

中尾山の風景

(中尾山の風景。煙突が見える町並みは焼き物の町ならではの風景。)

兼業農家も副業といえば副業

お仕事面についてですが西海陶器のほかにライターとしてのお仕事はされているのでしょうか?

はい。

東京に会社があるWebメディアと、大阪の会社からお仕事を頂いています。
東京から頂いているお仕事については、波佐見に関して発信したブログやTwitterを見てもらったことがきっかけで、ご依頼を頂きました。
大阪の会社からのお仕事は東京にいたころから継続して行っているんですけど、一度もリアルでお会いしたことはなく、Webでの打ち合わせとメールでやりとりしています。

遠方でのやり取りに際してやりづらさとかはありますか?

ないですね。

むしろ波佐見に住むことで、仕事がスムーズにいっている感じはあります。

大阪の会社から依頼されて執筆する記事は暦を題材にしているんですけど、波佐見町に来てより四季を感じることができていますし、暦が自然に基づいているっていう当たり前のことを実感しているので、そうした個人的な経験が記事に活きています。

東京の会社からも、波佐見のことや波佐見焼のことを書いてほしいという依頼をもらっています。いまはコロナ禍でライターが移動することが難しいですし、わたしは波佐見焼のことや窯元さんのことを日々勉強しているので、企画も執筆も撮影も行って、編集者の方とはメールなどでやり取りして納品しています。

今のところ、地方にいるから仕事が難しいと感じたことはないです。

東京の友達でも、ずっと在宅で今後オフィスに戻ることはないっていう人もいます。これからはさらに、どこでも働ける人が増えていくんじゃないでしょうか。

会社に副業のことを相談したときの反応はいかがでしたか。

社長が本当におおらかな人で、私が「今後も自分のスキルアップのためにもライティングの副業をしたいと思っています」って話したら、すんなりOKしてくれました。
「社員の中には、兼業で農家をやっている人も多いし、収穫の時期になったら有給を使って休む人もいる。それも副業って言えば副業だよね」って。
西海陶器という会社や経営する社長の考え方が柔軟で、ありがたいです。

波佐見町は関わり方を選べる地域

波佐見町で暮らすことを面白いと感じることができる人や住むのに向いている人はどんな人でしょう。

私は地元の会社で働いていて、しかも会社の寮に入っているので、個人的に移住をされる方とはまた条件が違うかもしれません。ただ、住環境という点から見ると、暮らしやすいと思っています。町にはスーパーやドラッグストアー、ホームセンターもあって必要なものは揃いますし、足りないものは通販で補えるので。

人間関係の部分でも、波佐見の人は接しやすいです。波佐見町の人ってちょっと人見知りな部分があるみたいで、ガツガツと介入してくる感じじゃないんです。でもこちらから話しかけたり、地域のイベントに参加したりすると、受け入れて仲良くしてくれます。

引っ越ししてから気づいたのですが、波佐見にライターがいないみたいなんです。どんな仕事でも、都会だと既にポジションが確立している人がいる可能性が高い。自分がどんなポジションで仕事を行っていくのか、慎重に考える必要があります。

その点では、チャレンジしやすい環境と言えますよね。自分の立ち位置を確立しやすいのではないでしょうか。

これからやっていきたいことや、興味があることを教えてください。

ものづくりの素晴らしさ、波佐見焼のよさを伝えていきたいです。自分がものづくりができない分、作り手さんをとても尊敬しています。

だって焼き物は、もともとただの土ですよ。それを成形して、柄を彫ったり描いたりして焼いて。焼くことで縮んだり、イメージや色が変わったりする繊細なものです。そういうものを、1日に100個、200個と、同じ品質で作っていくって、すごいことですよね。

なので今後は、自分でも焼き物づくりを体験して、身をもって大変さを知ることで、より作り手さんたちの想いを伝えることができたらと思っています。

あと波佐見町って、都会に比べるとインターネット上に載っている情報が少ないんです。町の人しか知らないお宝が、いっぱい詰まってるんですよね。地元の人には当たり前のことでも、よそから来た人には楽しんでもらえることが、きっとあるはず。

観光客向けのイベントなどもゆくゆくは考えてみたいです。例えば、棚田での米作りのことをもっと発信して田植え体験をしてもらうとか、山に囲まれているので山登りを楽しんでもらう企画もできるかもしれません。果物狩りも私は好きなんですけど、地元の人にとっては収穫は大変なものなので、捉え方が違うんですよね。よそから来た人間の視点を活かして貢献できたらうれしいです。

今後も、波佐見町に隠れている魅力を掘り起こして、発信していきたいです。

栗田さん