
都市部から完全移住することなく、田舎暮らしを満喫する。そんな新しいライフスタイルとして注目を集める「二拠点生活(二地域居住)」はご存知でしょうか?
最近ではメディアで多く取り上げられるようになりましたが、実際にどのようなものか気になる人も多いのでは?そこで今回は、二拠点生活とは何か、またそのメリットやデメリット、コスト面なども詳しく解説します。
二拠点生活とは?

二拠点生活は「もうひとつの居場所」を作ること
二拠点生活とは、国内の二つの拠点を行き来しながら暮らすライフスタイルのことです。コロナ禍以降、テレワーク環境が整ったこと、さらに政府が地方創生を後押ししていることもあって注目を集めています。「二地域居住」という名称が使われることもあります。
デュアルライフとも呼ばれることもありますが、都会または地方のどちらかの地域に完全に移住するのではなく、平日は都市で仕事をして、週末は自然豊かな地方で過ごすなど、柔軟に生活を楽しめるのが特徴です。
二拠点の使い方は自由で、災害時の避難場所や趣味用の空間として使ったりすることも可能です。仕事とプライベートのシーンごとや、その日の気分に合わせて二拠点を行き来し、好きな場所に滞在するのが代表的な二拠点生活のスタイルといえるでしょう。
二拠点生活が注目される背景
二拠点生活が注目され始めたのは、コロナ禍をきっかけに地方への関心が高まったことが背景にあります。内閣府が2023年4月に公表した「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査 P23」によると、東京都圏在住者の地方移住への関心は上昇傾向にあります。
二拠点生活に関して、東京23区の20歳代の関心は高く、2020年5月の段階で関心がある人が42.9%だったのに対して、2022年6月には50.9%と大きく上昇しています。2023年3月には43.0%と少し落ち着いたものの、都心に暮らす若い世代全体の40%〜50%が地方での暮らしに関心を持っていることが分かります。
関心が高まった主な理由には、豊かな自然環境への憧れや、テレワークの導入により地方でも都会と同じように働きやすくなったことなどが挙げられます。しかし完全な移住となると、仕事選びや交通の便といったさまざまなデメリットも出てくることから、より柔軟に地方での暮らしを楽しめる二拠点生活が注目され始めたといえるでしょう。
二拠点生活のメリット

都会と地方のいいとこ取りができる
二拠点生活の大きなメリットは、生活のなかで都会と地方それぞれのよさを味わえるところにあります。都会はビジネスやショッピングなどにおいて利便性が高く、地方は豊かな自然と触れ合えるといった異なる魅力があります。
二拠点生活では、都会と地方の両方に拠点を置けるので、気軽にそれぞれの魅力を楽しむことができます。
ライフスタイルの自由度が広がる
都会と地方というロケーションの異なる地域に拠点を置くからこそ、ライフスタイルの幅を広げられるのも二拠点生活のメリットです。交通の便などが整った都会の拠点では仕事をし、自然豊かな地方の拠点ではゆったり休日を過ごすといったように、ロケーションの違いを活かした暮らし方ができます。
また、都会と地方のそれぞれでコミュニティづくりができるため、一つの拠点のみでの暮らしよりも広い人間関係を築けるでしょう。
将来の本格的な移住の準備になる
二拠点生活は都会にいながら自然豊かな地方での暮らしも体験できることから、将来本格的に移住するための準備にもつながります。移住予定の地域に滞在して実際の暮らしを体験できるため、移住後に生じるイメージのギャップを軽減することにも繋がります。
長崎県では一定期間移住を体験できる「お試し住宅」を各自治体が提供しています。無料あるいは低料金で利用できる施設が多いので、移住に興味がある人はこちらもチェックしてみてください。
ながさき移住ナビ「お試し住宅のご案内(移住体験・お試し暮らし)」
二拠点生活のデメリット

住まいを2つ維持するコストがかかる
二拠点生活における大きなデメリットは、拠点の維持に固定費用がかかることです。都会と地方の二つの拠点で住宅を借りる場合、契約に伴って敷金・礼金がかかるほか、家賃や管理費、さらには光熱費が拠点ごとに必要になります。
地方では家賃が比較的低額であり、二拠点目を準備する際には全体の費用を計算したうえで、物件を購入するか賃貸やシェアハウスを利用するかを考えることが大切です。
移動に時間がかかる
二拠点生活には都会と自然の両方を満喫できる魅力がありますが、拠点間の移動に時間がかかる点にも配慮が必要です。長時間の移動が億劫になったり、予定が崩れてしまったりして二拠点を上手く活かせなくなる可能性もあります。
できるだけ負担なく二拠点生活を楽しむためにも、二拠点目は一拠点目からアクセスしやすい場所に置くことが大切です。
家族の理解や同意が必要になる場合がある
ライフスタイルに対する考え方は人によってさまざまであるため、特に家族と一緒に二拠点生活を始める場合はあらかじめ理解を得ておくことも大切です。家族の同意を得ずに二拠点生活を始めてしまうと、思わぬトラブルにつながる可能性があります。
特に仕事面や教育面などは、生活や子供の人生に関わることですので、事前にしっかり話し合っておきましょう。話し合いの際には「子供を豊かな自然に触れさせたい」「二拠点目に滞在するのは週末だけ」などといったように、二拠点生活をする目的や方法、魅力などを踏まえて伝えるとよいでしょう。
二拠点生活を叶えるコストの考え方

初期費用と固定費を把握しておく
二拠点を上手く活用するためには、それぞれの拠点の準備・維持に必要な初期費用と固定費を明確にしておくことが大切です。初期費用には、主に拠点の購入・契約時に発生する費用に加え、生活に必要な家具や家電の購入費なども含まれます。
固定費については、月々の家賃や水道光熱費などが挙げられるでしょう。明確な初期費用と固定費を把握しておけばあらかじめお金の準備ができるので、金銭的に余裕をもって二拠点生活をスタートできます。二拠点生活を開始した後も月々の費用を明確にしていくと、無駄遣いがないかのチェックにも役立ちます。
二拠点生活を始めるにあたって必要になる主な初期費用・固定費を以下にまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
| 初期費用の例 | ・敷金、礼金(拠点を賃貸かつ新規で契約する場合) ・家具、家電の購入費用 ・リフォーム費用(中古住宅を拠点として購入した場合) |
| 固定費の例 | ・水道光熱費 ・家賃(拠点を賃貸かつ新規で契約する場合) ・管理費(拠点を賃貸かつ新規で契約する場合) ・通信費(二拠点目でも固定回線を使用する場合) |
| その他費用の例 | ・交通費(拠点間の移動や移動先での交通費など) ・食費、日用品代(拠点ごとに必要になる場合あり) ・ガソリン代(車を利用する場合) |
交通費や移動費は立地によって大きく変わる
二拠点生活では移動を伴うため、拠点がある場所の立地によって往復に必要な交通費が高くなります。特に駅まで遠かったり、バスの本数が少ないといった地域の場合は、自動車が必須になることも少なくありません。
電車や新幹線のチケット代、ガソリンや高速道路利用にかかる費用は決して安くないため、二拠点目を考える際にはあらかじめ交通の便をチェックしたうえで立地やアクセス方法を踏まえて検討することが大切です。
仕事や収入とのバランスも考える
快適な二拠点生活を送るためには、仕事の負担と収入のバランスを考えて暮らしのプランを練ることも大切です。二拠点を維持するには通常の倍のコストがかかります。
しかし、コストが高すぎると現在の収入では賄えなくなりますし、そのコスト分のお金を用意するために仕事の負担を増やすことになると、ゆったり過ごす精神的な余裕がなくなってしまいます。今の仕事の方法や収入で二拠点の維持ができるか、あるいは過度な固定費がかかっていないかをチェックすることが重要です。
家賃などの固定費がより安い場所を選んだり、精神的に負担が少ない仕事に転職するなどして、仕事内容と収入のバランスが取れる方法を考えましょう。
二拠点生活に向いている人

フリーランスやテレワーカー
フリーランスやテレワーカーは好きな場所で仕事ができることから、二拠点生活がしやすい人といえるでしょう。基本的にオフィスに出社する必要がなく、時間にゆとりを作れる傾向にあります。
特にフリーランスについては特定の企業に所属しない業務形態であり、スケジュールや仕事の方法・時間配分も自由に調整できます。
平日の昼間は都会の拠点で業務をし、午後から次の日にかけては地方の拠点でリラックスするといったこともできるでしょう。
長崎県のホームページでは、フリーランスやテレワーカーの拠点となる、県内のリモートワークスペースをまとめたページがあるので、参考にしてみてください。
長崎県リモートワークスペース紹介|長崎県ワーケーション・リモートワーク支援公式HP
週末を自然の中で過ごしたい人

気分に合わせて異なるロケーションで暮らせることから、二拠点生活は自然の中で過ごしたい人にも向いています。美しい海や森、山頂からの景色など、都会ではなかなか見られない自然の姿に直接触れられるため、よい気分転換になります。また都会の喧騒から離れられるので、休日や週末もリラックスして過ごせるでしょう。
定年前後でゆるやかに移住を考えている人
定年を機に移住することを考えている人にも二拠点生活はおすすめです。都会にある今の住居を維持しつつ移住後の暮らしを体験できるので、移住先が自分に合っているかをチェックできます。地域の人との交流やコミュニティを作っておけば、定年後に孤独を感じることを防げるでしょう。
また、定年後は時間に余裕が出てくることも多いため、二拠点目を趣味を楽しめる空間に整えておけば定年後の生活をさらに豊かにできるでしょう。
家族の状況や介護などで完全移住は難しい人
子供がまだ小さい・親の介護があるなど、家庭の状況で完全移住が難しい場合にも二拠点生活が向いています。一拠点目から行き来しやすい場所に二拠点目を置いておけば、万が一何かトラブルや予定が発生した場合でも、完全移住に比べてすぐに対応しやすいでしょう。
まとめ:柔軟なライフスタイルを実現する二拠点生活
自宅に加えてもうひとつの居場所を作る二拠点生活は、柔軟な働き方がしやすくなった現代だからこそ注目されているライフスタイルといえるでしょう。メリットやデメリット、向いている人の特徴など、本記事で紹介した内容も踏まえて、二拠点生活を検討してみてはいかがでしょうか。