2025.10.15

移住者体験談

【松浦市】長崎県松浦市・青島で出会った“ストレスゼロ”の暮らし──海と自然に包まれて過ごす家族との時間

長崎県松浦市・青島で新しい人生のスタート

「漁師になるつもりなんて、まったくなかったです。釣りはやっていたけど、強いて言えばせいぜい魚屋でアルバイトをしたことがあるくらいで。」と話すのは、現在、松浦市の離島・青島で漁師として暮らす谷浩介さんです。

出身は大阪。高校卒業後は奈良を拠点に営業職として働いていたものの、仕事に追われる日々で、家族との時間も十分に取れない状況が続いていました。そんな中、長崎県出身のパートナーの影響もあり、「海の近くでの生活も面白そう」と考えるようになったといいます。

「30歳までに転職するかどうかを決めたらいいんじゃない?」そんなパートナーの言葉がきっかけで、翌月、29歳(当時)の谷さんは松浦市を訪れ、地元漁港の組合長を訪問。「漁師をするなら、こっち(青島)にきて問題ないよ」。その言葉に背中を押され、わずか数ヶ月後には会社を退職し、移住する決意を固めました。

取材を受ける谷さん

“漁師”という選択と、家族との時間

「海辺の近くでの生活といえば漁師しかないんじゃないかなと思ったんです」。「実際に青島の方々はとてもウェルカムな雰囲気で、すぐに『きても良いよ』と言ってくれたので(青島への移住直後から地元の漁師のもとで)2年間見習いをさせてもらいました」。そう語る谷さんは、2年間の修行期間中に、船の乗り方や網仕事、その他、細かな作業を丁寧に教えてもらい、徐々に技術を身につけていきました。

「朝早く漁に出て、午前中くらいに仕事が終わるのかなと思っていたのですが、養殖業だったのでそうではなかったんです。朝6時くらいから夕方までですね」。ただ、大阪での営業職の頃は残業が多く「子供の顔が見れないことも多かったのですが、ここに来てからは家族との時間がめちゃくちゃ増えました」と話します。

養殖業からの独立を決意したのは、「一人でやるなら素潜りくらいはやっておかないと」という先輩漁師の方からの助言がきっかけだったと言います。「最初に連れていってもらったときは 、全然潜れなかったんです。それからまた時間をおいて潜りに行ったのですが、なぜか潜れるようになっていて、アワビがよく採れました。そこから素潜りで独立した流れです。」

自らの息だけで潜り、今では15メートルほどの深さまで潜り、アワビやサザエ、ウニなどを採取できるようになったとのこと。

朝は5時半に起床し、朝食を作って家族を送り出した後、9時から漁に出発。1日あたり平均5時間ほど泳ぎ続ける生活を送っています。「今の自分のライフスタイルには、この働き方が一番合っていますね」と、谷さんは充実感をにじませます。

取材を受ける谷さん

自給自足に近い暮らしと島の人間関係

「せっかくなら畑はしたほうが良いということで、土地を貸してもらって畑をやっています。最近は鶏も飼い始めました。朝食にはその朝に採れた新鮮な卵をいただいたり、良いものを食べることができているなと思います」。谷さんの暮らしは、まさに“自給自足”に近いスタイル。漁で得た魚と、畑で育てた野菜中心に、食卓は日々豊かに彩られています。

「大阪にいた頃よりも、食べることに関しては充実しています」。子どもたちも、そんな暮らしにすっかり馴染み、谷さんの手料理がお気に入り。チャーハンや、アワビのバター焼きが大好物とか。

さらに、島ならではのコミュニティにも魅力を感じていると話します。「青島の人たちはとても温かくて、移住してすぐに溶け込めました。今ではほぼ全員が知り合いです」。

地域でのお祭りや集まりも多く、「夏場は週に2〜3回も飲み会があります」と笑います。「大阪にいた頃は近所付き合いがほとんどなかったけれど、ここでは自分からつながりに行かないと情報も入ってこない。だから自然と人との関係が深まります」

移住者として見据えるこれからの展望

「何もしないと人が減っていく。だからこそ、僕のような移住者が1人でも増えてくれたら、何か新しいことが始まるかもしれません」。観光客に向けたスポット整備にも意欲を見せ、「あそこをもう少し整備すれば、もっと楽しめる場所になる」と、青島の未来を思い描いています。

「ゆくゆくは、“飲み屋”のような飲食店をやってみるのも面白いかなと思っています」。そう語る谷さんの表情からは、この島での暮らしに対する深い愛着と、地域への感謝が感じられます。

地方での暮らしは、“都会では見えなかった豊かさ”を再発見する旅でもあります。青島の自然、食、そして人のあたたかさ──それらが谷さんにとって、かけがえのない財産となりました。

松浦市には、何気ない日常の中に、自分らしい生き方のヒントがあふれています。谷さんのように、地元に溶け込みながら新しい道を切り拓く人が、これからの地域をつくっていくのかもしれません。

取材を受ける谷さん